第17回難病対策委員会 IBDネットワークの意見表明

患者団体などからヒアリングを行う第17回厚生科学審議会疾病対策部会の難病対策委員会が11月14日開催され、JPA推薦でIBDネットワークと全国パーキンソン病友の会が意見表明を行いました。詳細報告は後日ですが、とりあえずIBDネットワークの萩原氏が述べた意見を紹介します。

資料(厚労省のHP)
IBDネットワーク表明意見


第17回 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会
 IBDネットワーク(JPA推薦)の意見表明

2011年11月14日 IBDネットワーク 萩原英司

IBDネットワークの萩原です。発言の機会をいただき感謝します。
 「あなたは難病です。残念ながら治療法はありません」、そう告げられた時のことを鮮明に覚えています。
「難病対策の拡充」は私たち難病患者の共通の願いであり、希望です。難病に指定されている疾患も、まだ指定されていない疾患であっても「一日も早く苦しみから解放してほしい」それを強く思います。そういう思いで、私は難病患者・家族を代表して発言します。  
 今日の発言は事前資料と前後します。    
 国の難病対策は様々な成果を生み出しており、日夜、努力してくださっている関係各位にこの場を借りてお礼申し上げます。
しかし難病と位置づけられる疾患の中には対症療法が出たものがあるものの、根治療法が確立された疾患はなく、難病患者の生活や療養の実態は、まだまだ厳しい現実です。  
 IBDは潰瘍性大腸炎とクローン病の二つの特定疾患の略称です。10代20代の発症者が多く、再燃を繰り返すことが特徴です。
 日頃から健康管理に努めていても、病勢が突然に増悪するという特性があるため、多くの患者は常に不安を抱えて暮らしています。
私も突然の下血から数か月の入院を経験しています。初回より2度目、3度目は「自分は初回発作型ではなく、再燃型、つまり 本当にもう治らない難病だったんだ」「食事制限で家族と一緒のものを食べず、こんなに努力しても再発するのか」とショックでした。
 今年5 月の再発ではトイレに20 回以上通う、5 分おきにくる腸を絞られる痛みと自分でコントロールできない、我慢できない下血とため、50を越えてオムツが離せませんでした。
 幸い職場の理解を得ていますが、若い人にとってこの病気が就学・就労・結婚・出産など、人生の節目に及ぼす影響は多大です。
 また、悪化によって日常生活や就労に相当の問題が生じても、周期的、断続的に生じる障害への認定基準がないため、身体障害者手帳の交付率は低く抑えられています。
 若年性発症の疾患に共通しますが、就労では、やっと見つけた就職先さえ薬を飲んでいる所を見咎められ病気が理由で解雇される、役立たずとけなされたり、毎日人事部長に呼び出され退職に追い込まれた例があります。
 自立すべき時期に自信を失って引きこもる。その年齢で当然身に着けているべき社会性を得られず、親の年金頼りか生活保護以外に生きる術がないと言った深刻なケースもあります。
 社会生活からドロップアウトしないように、又、家族を守るために、体調が悪化しても気力を奮い立たせて仕事を続け、通院治療に努力している姿をご想像下さい。
 働く条件のある患者が働けるような環境ずくり、ディーセントワークを進める。
 納税者へと転換するような思いきった建設的施策や、働けない期間に生活を支援する施策など、支える受け皿整備が必要と考えます。
 働くことは生きる土台、社会とつながっている実感。生きる気力に繋がります。
 生きにくさ、働きにくさ、差別の解消や、思い切った難病対策の実施に当たっては、難病問題の国民的理解促進を図る必要があります。
 当事者が働きやすく、企業側にとっても受け入れ易い環境を整えるには、難病患者を法定雇用率に加えることです。
 患者の自立性を高める上では、緊急に必要な施策と考えます。
 2009 年2 月の難病対策委員会で、当時の厚生労働大臣の「難病対策の歴史で新しいページを」の発言と、研究費の4倍化は画期的でした。
 それだけに今年の9 月以降のこの委員会の議論内容には驚きと不安が広がっています。
 論点整理に挙げられた「公平性」ですが、全ての難病を研究と医療費補助の対象にすることこそが、冒頭申し上げたように「公平」と考えます。
「ある一定の基準をもとに対象疾患を入れ替えることを考える必要があるのではないか」というご意見も出ているとのことですが、本当にそうだったでしょうか?
 万一その場合、総合的な見地から「難病問題が解決した」という論拠を厚生労働省や難病対策委員会は患者側に理解できるように示し、納得を得る必要があります。
 またいつの間にか入ってきた「5万人基準」の根拠はどこにあるのでしょうか?患者数の多い少ないは病因究明に関係ありません。
 「一定の治療法が確立」という点についてですが、IBDの治療は対症療法であり、再燃を防ぐことも今なお難しいのが実情です。
 高価な生物製剤を用いても4~6割、難治例では2割の寛解率です、予防法のない、治療法も未確立の疾患としてとらえるべきと考えます。
患者数が増え続けているということは、集団の健康を脅かす「公衆衛生」上の問題として国は考える責任もあるのではないでしょうか。
 前述のとおり潰瘍性大腸炎患者は障害者制度に該当する者も数%と少なく、大多数は年金受給年齢でもありません。医療費公費負担が唯一のセーフティーネットなのです。
 クローン病、そして難治性の潰瘍性大腸炎でも使われはじめた生物製剤は非常に高価で、公費負担制度から外れれば、「薬代のために働く」「この治療法を選択できなくなり、治療法が10 年前の水準に戻る」「医師の進める治療の第1選択肢が使えない」ことになります。
 結果、重症患者と総医療費が増加し、疾病によっては命さえ脅かしかねません。
 なぜなら現行の高額療養費制度も、改正案も、難病患者のように生涯にわたり多額の医療費を要する慢性疾患を前提としていない金額設定だからです。特に低所得層や4~50 代の子育て世代にはたいへん厳しいものです。
 なお「経済的理由による受診率の低下が見込まれ、研究に影響を及ぼすのは明らか。」との研究者からの指摘もあります
 税と社会保障の一体改革の一環として議論されていますが、税収不足と社会保障費抑制の対置からは「長期慢性疾患をもつ生活者」の最低限の生活を脅かすことへとつながりかねません。
 障害者基本法改正の付帯決議や国会答弁で「難病も法律の障害者に含む」とされています。
 併せて障害者手帳、障害年金等の基準を、医学モデルから社会モデルへと変更を推し進めるべきです。
 そのために昨年のアンケート調査だけでなく本格的な聞き取り調査など難病患者の実態をきちんと把握をした上で、必要な時間をかけて新制度設計とワンセットによる検討を期待します。
 障害や疾患の区別なく必要な支援や合理的配慮が得られる社会こそ、誰もが安心して暮らせる思いやり社会です。国民が誇れる制度を1 日も早く作ってほしい。そのために難病対策予算を大幅に拡充していただきたい。

2011年11月15日