第19回難病対策委員会(1月17日)開催、法制化を視野に見直しを検討

昨年12月の「中間的な整理」をふまえた難病対策の見直しにむけて、第2ラウンドの委員会がスタートしました。
 資料は、既に厚生労働省ホームページに掲載されています。
  http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000020888.html

 以下、水谷文責による傍聴メモです。(正確な内容は、後ほど公表される公式の議事録を参照してください)

 冒頭、外山健康局長が、平成24年度予算案編成においては、概算要求をうわまわる予算が確保できたこと、また昨年の税制改正において年少扶養控除の見直しによる増収分を、平成24年度に限り特定疾患治療研究事業の地方超過負担分に充てることで必要な国負担分の90数%まで確保することができたこと、また政府の社会保障と税の一体改革素案のなかに、「中間的な整理」に基づいて医療費負担の法制化についての検討を盛り込むことができたと報告しました。局長は、年開けからの難病対策委員会では、難病対策の見直しについては法制化を視野に、さらに掘り下げて検討をしていただきたい。そのための作業部会として、健康局長の下にワーキンググループ(WG)を設置したい。と述べました。
 局長のあいさつをうけて金澤委員長は、この委員会での検討内容がかなりの部分、政府の政策に取り入れられたことに感謝を述べ、厚生労働省の今後の努力に期待したいと述べて議事に入りました。

(報告事項)
(1)平成24年度主な難病対策予算について
 議事に入り、平成24年度予算案の説明では、事務局(疾病対策課荒木補佐)より難病対策予算の各項目の予算額について報告がありました。
 難治性疾患克服研究事業等の研究予算は概算要求の100億円を確保。特定疾患治療研究事業(医療費助成)については概算要求300億円にさらに上乗せして350億円が確保できた。その他の事業については前年同額を確保した。新規事業として、「難病患者の在宅医療・介護の充実強化事業」(予算額4500万円)がついた。また、平成24年度の暫定的対応として、年少扶養控除の廃止等による地方財政の増収分の一部を、特定疾患治療研究事業の地方超過負担分の財源に活用する(269億円)ことで、来年度は地方超過負担が大きく改善されるとの報告がありました。
 伊藤委員より「地方超過負担の解消は来年度限りか」との質問があり、外山局長は「地方超過負担の解消を目指すことは今後も続けるが、具体的な財源の手当としては来年度分を税収増を活用するということになる。一方で一体改革のなかに法制化を含む見直しが書き込まれたので、今後についてはそれを念頭に(超過負担解消を)どうめざすかは検討課題となる」と回答しました。
(2)社会保障・税一体改革素案について
 続いて、一体改革素案の内容に書き込まれた難病対策の見直しについての文言が確認されました。金澤委員長からは、今後も手綱を緩めずに努力をしてもらいたいとの言葉がありました。

(検討事項)
(3)今後の具体的な検討事項について
 金澤委員長より、一体改革素案を受けて、これから法制化を視野に入れて具体的な検討に入りたいとの前置きがあり、事務局から、提示された検討事項案(資料3)の説明がありました。
 質疑意見の主なもの
委員:医療費の助成については項目に入らないのか?
局長:イメージとしては「2」の医療体制に入る。
金澤委員長:「医療体制」という名前は適切でないかもしれない。医療をとりまく様々なシステムというようなネーミングが適当かと。
委員:「中間的な整理」にはいろんな課題が整理されているが、今回検討事項として示されたのは、ヨコ串のようなことで理解していいか。
局長:一体改革素案に記された「法制化を視野に」ということをどう考えるかと言う点で、法制化するために、難病対策をとりまく様々な問題を一気にと進むのか、どこを重点的にまとめるのかということがある。難病対策は、単一の制度でなく、いろんな制度に依存しているというなかで、難病対策に特化した制度をつくるためにはどうするか。本来は行政がグランドデザインを示すことが必要かもしれないが、みなさんのご意見とかけ離れてしまってもいけないので、まず検討をと提示した。
委員:「中間的な整理」との関係を聞きたかった。項目の検討だけではなく、もう少し中身を伺ってから議論をしてはどうか。
金澤委員長:では、WGの話を先に説明してもらえるか。
事務局:検討項目についての議論を行うためのワーキンググループの設置について。(資料5、資料4についての説明)
(ここで資料4について、医療保険による訪問看護、介護保険における訪問看護、難病患者等居宅生活支援事業について、それぞれの選択主体、費用等について質疑があった。また委員から、ショートステイ(短期入所)事業は市町村の実施率29%に対して実績はたったの3県?という驚きの質問も出されて、介護保険でやられているから、という議論があるなかで伊藤委員より「元々、居宅生活支援事業は、障害者福祉、介護、医療保険の対象にならないものをカバーする事業として実施されている。現実には手帳がとれず福祉も使えない、介護保険も使えないという患者はたくさんいるが、制度の側が周知徹底されていないということだ」と指摘しました。
(ここで、事務局よりJPA、北海道難病連で行った平成23年度難病患者等ニーズ調査のなかから福祉制度の利用に関する抜粋資料の説明があった。
伊藤委員は補足として、今回の調査は、制度が複雑で回答者も制度をよく知らないで答えているところもあった。今後もっと厳密な調査を行う必要があると強調しました。)
伊藤:検討項目に戻って、「3」について、「在宅看護・介護等について」では狭いのではないか、もっと広くとらえてほしい。また、「就労支援」がその他となっているのはいかがなものか。
局長:就労支援は障害の方でやっている。ワーキングの項目で就労に重きを置いていないのは、難病の法制化を軸足としているからだ。
金澤委員長:伊藤さんの言うのは、「その他就労」ではなく、「その他」をとってよいのではないかということ。「在宅看護・在宅介護」に変わる案はあるか。
伊藤:患者家族への支援の在り方とか、包括的なことを表すように。
局長:法制化では、きちんとした医療、介護ということが全面に出ることが必要で、そこに光をあててはどうかと思ったから。
委員:優先度の高いことに特化するのが適切ということだと思うが、広く包括的にとらえることも考え方。はじめは広めに議論していいのでは。
委員:WGの位置づけや人数については?
事務局:健康局長の下に設置。メンバーは委員会委員の方+別途選任。
人数は10人以内。5~8人程度で。金澤委員長の意見も聞いて人選を行いたい。できるだけ早く立ち上げて月数回開き、春先までに難病対策委員会に報告できるようにと考えている。
金澤委員長:医療費助成の在り方はどうするの?
局長:一番重要なテーマ。WGでやりたいのは難病医療費助成の位置づけ。
56疾患を越える疾患を、どの範囲まで広く位置づけるか。最終的には行政が決めることだが、WGでまず整理して委員会に材料を提供してほしい。
山本課長:このテーマは研究班の方でも議論していただいている。
局長:診断があきらかな130疾患まではわかるが、それ以上にどれだけの数の難病患者がいるのかは、今の研究班では必ずしもわからない。どこまでをどのようにやればいいのか。行政が責任もって決めなければいけないこと。そのための実務的な整理としてぜひWGでやってほしい。
今、障害保健福祉部では、「障害者自立支援法一部改正」を検討している。この検討事項と重なる中身もあると思う。
伊藤:新法のなかに難病をどう入れるのかについては、障害保健福祉部から私たちも相談されている。私たちは、モデル事業を行うことも含めて、検討してほしいと話してきた。来週には、障害者雇用対策でもヒアリングを受ける。それぞれの担当課での議論がバラバラな印象を受ける。一緒に協議するような機会がないと総合的視野にならない。ぜひそういう場をもつことを検討いただけないか。
局長:そのとおりで難病対策は総合的に見ないといけない。そのために、省内では検討チームも設けている。難病の定義がずれるのもまずい。慎重にしないといけない。もう少し事態が進めば総合的な議論の場も必要。
委員:先ほどの項目の代替案として、「保健・福祉体制の整備、自立にむけた支援」ということではどうか。
局長:いろいろご意見があると思うが、先ほど委員長がまとめたようなことで仮に項目立てをさせてもらい、中身も今後必要に応じて整理をしていくことでご理解願いたい。
委員:介護、在宅は制度が複雑。医療費については医療保険で一本だが、介護、在宅になると制度が複雑になる。医療以外は、福祉を含めてできるだけ制度を一本化することはできないか。

(次回)
事務局:次回以降は、WGにあわせて委員会を行う。一体改革のうごきもふまえると委員会は間を空けずに開くようにしたい。次回第20回委員会は、2月7日午前中を第一候補とすることで。
以上で閉会

(まとめ文責・水谷幸司)

2012年1月19日