厚労省「難病対策に関する意見交換会」(8月18日)での外山健康局長等の説明

厚生労働省は新たな難病対策を検討する上で、日常生活において難病課患者が抱えている困難さや、医療や介護、福祉サービス等に関する当事者の要望等を聴くことを目的に8月18日(土)、(社)全国社会保険協会連合会研修センターにおいて「難病対策に関する意見交換会」を開催しました。会場には予め申し込みをしていた50の難病団体等が出席し、1団体ずつ意見を述べました。
 そして、全体の意見を受けて外山健康局長から説明がありました。また、自立支援法の関係では障害保健福祉部企画課の田中課長補佐から説明がありました。両氏の説明は、今後の厚労省側の方向性を知る上で大切であると思われますので、以下にその大要を記します。

〈外山健康局長からの全体を通しての説明〉
 冒頭に会場から質問(50団体は抽選されたのか)
 「抽選はしていない。またやってもいい」のやりとり
 5月27日の日本難病・疾病団体協議会(JPA)の総会が有明であり、そのさい、いくつかの団体から意見を聞いてほしいという要望があり、やることになったのだが、もっと早くやればよかったかもしれないが、紆余曲折で開催が遅れた。
 難病対策への貴重な意見を伺い、厚労省としても、難病対策の充実にむけて一層の尽力が必要だと感じた。本日の資料は、我々職員、一言一句、事前に読んだ。これだけの難病団体が一堂に会するところで話を伺った。もうすぐ定年の年になるが、初めてのことだ。勉強になった。16日に難病委員会があり、きょうは意見を伺い、22日は疾病対策部会があり、(開催して)よかった。
 さまざまな集団、高負担の解消を訴える方、言葉悪いが希少な患者の方、人数が多いが有効な治療法がない方など、中心的課題も治療法や研究・開発や経済的な支援、就労、情報還元などバリエーションの多い問題を抱えていらっしゃる。
 共通項としては、身体的経済的な困難だけではなく、メンタル的精神的社会的困難な状況下におかれている。これらを包含するような難病対策を推進したい。現段階で、私から全て体系的網羅的に説明するのは困難だが、16日に開催された難病対策委員会「中間報告」の報道に関連して、若干懸念されたこと、本日出された論点を踏まえて説明したい。
 第一に、医療費助成の在り方について。一部の報道では、今日の発言された懸念にもあったが、現行の医療費助成の対象になっている56疾患の軽症者を単純に対象から外すことで、対象疾患の範囲を拡大して、重症にシフトするかのような報道があった。今回の中間報告は、総合的な難病対策としての外縁としての概念となる難病定義は、昭和47年の難病対策要綱を参考につつ、できるだけ幅広く捉えるのであって、その一方で、医療費助成など個別施策の範囲については、施策の趣旨・目的などを踏まえて、比較的まれな疾患を基本に選ぶべきだとなっている。
 医療費助成については、できるだけ、診断のつくものは、未診断のものについてどうするか、宿題があったが、診断のつくものについては、できるだけ対象を広げるように努力したい。対象の範囲の拡大含めた見直しに当たっては、より公平にする。何を持って公平かという議論もあるが、できるだけより公平にする。一方で、効果的な治療法、難病、あとで申し上げるが、治療法ができることが重要だと思っていて、引き続き、医療費助成対象となるかどうかも、定期的に評価することも必要だとされた。対象疾患の範囲について、重症度の設定をするとされた。治療法を評価することは大事だが、現行56疾患の軽症者を外して、財源として新たにレアな重症者にシフトすることはない。
 決定のプロセスが大事だという発言があった。できるだけ議論は公開したい。憲法を順守するのは当然だと思う。
 二点目は、「新・難病医療拠点病院(仮称)」の整備について。
前提として専門医の養成・確保が各分野で心配だという意見があった。持ち帰るが、その前提に立ち、難病の診断・治療について高い専門性と経験を有する拠点的な医療機関として、新たに診断医療拠点病院を整備することと書いてある。さらにその中で、神経難病のベッド確保がゼロになると困るという話があった。それを含むという、その上に立って、正しい診断の拠点病院を作るという趣旨だ。そこでしか治療できないのかというと、そんなことはない。どこにいても診断がつかない患者がたらいまわしにならないようにする、現在の難病拠点病院をさらに発展して、高い専門性を
持つ拠点的な病院を整備することだ。そこだけで治療をやるという報道もあったが、そうではない。また、身近な診療所でも受けられるように目指したい。専門性を確保しつつ、二律相反するようだが、医療アクセスを保障する。
 三点目は、患者情報のデータベース化だ。一部報道では、薬の開発に役立たせるために、拠点病院に患者情報がデータベース化されるとのべられていた。現在の臨床調査個人票では、治療研究に十分生かされていないという意見がある。公費医療費助成制度を拡大する際には、データが特別な研究は別として、新薬開発に役立つ必要があるという考えがある。
 この医療費助成に被るが、新しい治療法開発がある。早期に還元する。詳細は省略するが、きょうも網膜色素変性症の話、あったと思う。京大のIPs細胞研究はわが方が支援している。ALSで決め手の治療法がないわけだが、幹細胞増殖因子を投与することで、治療する。いろなロケーションの話、治療研究は柱に置いている。
 四点目は、施行時期について。
 一部報道で早くて再来年を目指すと書いてあるが、できれば通常国会に法案提出をめざすと副大臣もいっている。来年度の概算要求で努力をしたい。
 最後に、きょうのヒアリングの結果をどう受け止め、反映得させるか。ご了解いただければ、厚労省のホームページにまず出すだろうし、各委員に報告しないといけない。難病対策委員会に詳細は報告しないといけない、将来的には大臣のPT、こういう話をいただいたことは報告しないといけない。秋以降の総合的な医療費助成、研究、福祉、就労に。
難病手帳制度やトランジションのこと、痛み、個別事項の説明は担当課長から。
 健康局長で癌や肝炎も取り組んでいるが、政策形成が変わってきた。大臣が諮問する委員会は、患者が委員に入っており、いまの話とダブるかもしれないが、当事者として意見を述べられて、全ては整合性を持って実現できるとは思わないが、そういう時代になってきている。軽はずみはことは申し上げられないが、難病政策があるということだ。

〈厚労省障害保健福祉部企画課 田中課長補佐の説明〉
 難病の方では、自立支援法の関係もあるので、詳しめに説明する。
 遠位型ミオパチーの方から、介護行政を強化してほしいという意見があった。難病患者に対する介護訓練支援、日常生活用具の給付事業により行われるが、来年の4月から政令で定める難病患者については、障害者総合支援法による日常生活用具給付事業において給付することになる。自立支援法に基づく日常生活用具の給付事業は、障害児・者が日常生活をより円滑に行われるための用具給付、または、貸与する事業であり、地域特性や利用者の状況により各市町村の判断で、柔軟に実施していただくように、地域生活支援事業に位置付けている。国は必要な財政的支援をおこなう。来年(2013年)4月以降、引き続きこの事業は、地域生活支援事業として、位置づけられることになるが、難病患者に対する日常生活用具給付事業は、給付されてきた種目については、日常生活用具給付事業において給付してもらえるよう、全国会議など半年間、開き、必要な対応を行う。
 膠原病友の会から、福祉サービスの対象範囲をどうするのか。質問があった。障害者総合支援法は、障害者の定義で、新たに難病等を位置づけ、障害福祉の対象とすること、としている。対象は政令で定めることとしている。その具体的範囲は、「中間報告」によれば、範囲は現在、難治性疾患克服研究事業の研究班において調査・分析を行っており、その結果等の他、新たな難病対策における医療費助成の対象疾患の範囲も参考にしつつ、障害者総合支援法の施行に向け、検討するとなっている。
 この「中間報告」を踏まえ、障害者総合支援法の施行に向けて、検討していきたいと思っている。
 福祉サービスのメニューは細かく調査して、ということだが、障害者総合支援法の福祉サービスの提供に当たって、対象者には、調査を行い、障害継続などの認定などの手続きを取った上で、必要と認められるサービスを利用できることになる。
 「難病を持つ人の地域自立生活を確立する会」からは、障害者基本法との整合性について質問があった。サービス給付法である障害者総合支援法では、市町村などの現場に混乱を生じさせることなく、確実に実施してもらうために、給付対象を明確にする必要がある。
 障害者基本法の「その他の心身の機能の障害」には、難病に起因する心身障害も含まれると国会答弁されている。この答弁を踏まえ、「治療方法が確立していない疾病」「その他特殊な疾病」であって、「政令で定めるもの」が総合支援法で規定されている。
 「手帳要件を課さないモデル事業を」との要望があるが、今後、身障者手帳がなくても、障害程度区分の認定などの手続きを取った上で、必要と認められるサービスを受けられることになる。25年4月、来年4月から利用できることになる。なので別途、モデル事業を設けることは考えていない。
 ウエルナー症候群とRSDからの「痛み」の関係だ。身体障害者福祉法の身障者手帳への質問と思う。法律上、一定以上の身体機能障害が存在し、かつ、その機能障害が永続していること、という考えが根本だ。身体障害の認定を行って、手帳を交付している。認定基準の話があった。疾病障害認定審査会があり、そこの障害認定が、他の障害とのバランスを維持しながら、比較的専門的論点で審査して定められたのが基本なので、痛みはなかなか難しい。現在は痛みだけを持って身障認定はできないが、法解釈のなかで筋力テストや関節可動域の測定、エックス線写真などで、疼痛の障害があると医学的に証明されれば、身障手帳の交付の対象となる。
 なお、手帳の対象者や政令で定める難病の方などは、今後、障害程度区分の認定などの手続きを受けて、必要とされる福祉サービスを受けられる。
 ケアマネジメントの位置づけだ。支給決定に関しては議論があり、平成22年12月に議員立法成立した障害者自立支援法の一部改正、支給決定プロセスの見直しが行われている。ケアプラン、サービス等利用計画案には本人の意向を勘案することになっている。障害者等のおかれている環境等に加えて、サービス等利用計画案を勘案して、支給決定を行う仕組みになっている。作成対象者も今後、難病が入ってくる。現在のケアプランの利用は一部だけで、十分ではない。平成26年度の末までには、すべての障害者福祉サービスをの利用者へ段階的に拡大することとなっている。ケアプランは充実されていくだろう。
 プラダーウィリーの方から療育手帳のことがあった。事務次官通知で、都道府県の判断で実施となっている。IQが高いことによって、知的障害と判定されない発達障害の方は、療育手帳の対象外であり、これを改善するには、知的障害を広げることになるが、一方で、発達障害については、精神障害に該当するということだ。現在、精神障害手帳要件に該当する。身障者福祉法に基づいて交付される。
 「心臓病の子どもを守る会」から、自立支援医療の問い合わせがある。自立支援医療における利用者負担は所得に応じて、月当り負担上限を設定している。育成医療については、主に若年世帯が受給者の中心であり、特例措置として、さらなる負担上限額が設定されているが、厚生医療の中間層、重度かつ継続該当しないものは、月ごとの利用者上限が設定されていない。経過措置であり、24年3月までだったが、27年3月まで延長したところだ。


発言大要作成は下垂体患者の会 はむろさん

2012年9月8日