第14回難病対策委員会(9月27日)、新たな難治性疾患対策にむけての議論はじまる! 前日に10年ぶりの疾病対策部会開催、前回に続いて、健康局長が最後まで出席し討論に参加するなど、厚労省の「本気」を示す
○添付資料以外の資料は、厚労省ホームページに近く公開されるものを参照してください。
○今回の委員会に提出された資料のうち、アンケート調査資料の全文は北海道難病連およびJPAのホームページに全文が掲載されています。こちら
冒頭金澤委員長より、前日に10年ぶりに開かれた厚生科学審議会疾病対策部会についての報告があり、「上部部会からの指示があるので、この検討から入りたいとして、次の「検討指示事項」が提起されました。
①医療費助成制度の課題…経費の傍聴・都道府県の超過負担、対象疾患への不公平感という2つの問題に、制度の安定性および公平性の問題としてどう考えるか。また研究事業としても十分機能するよう改善が必要。
②難治性疾患克服研究事業(130疾患)への不公平感(5000~7000あるといわれる希少疾患のごく一部しか対象になっていない。
(全文は添付資料参照)
議論では、伊藤委員より「安定性について強調されることは理解できない」と発言があり、事務局が「今のままでは地方超過負担が増加し、事業そのものが危うくなるので、そうならないように、ということ」と答え、伊藤委員も「難病対策を継続するために、ということなら理解できる」と応じる場面もありました。
次に、伊藤委員による「難病患者等の日常生活と福祉ニーズに関するアンケート調査」(厚生労働省平成22年度障害者総合福祉推進事業)の報告書の内容について説明がありました。続いて事務局から、国立保健医療科学院が行った「難治性疾患患者の生活実態に関する調査」報告の説明もありました。
そのうえで、特定疾患治療研究事業の現状について、前回に引き続き事務局より、①対象疾患の選定について、②対象者の認定について、③研究の側面について、④運用及び都道府県の役割について、の項目ごとの問題点の報告。海外の希少性疾患対策についての現状報告。難病相談・支援センターの現状についての報告がありました。
自由討議では、特定疾患治療研究事業について、治療研究事業から医療費助成を行っている現行制度ではなく、治療研究と医療費助成を分ける方向での見直しが必要との発言が続きました。とくに、海外では研究事業は医療費助成とからんでいないため、純粋に研究のためのデータを集めることができるが、日本の制度では、医療費助成対象の患者の登録のためのデータになるために医師が患者のためにと、より重症にデータを書いてしまい、研究データとしては偏りができてしまう。またデータが56疾患に限定されてしまう。などの問題が出されました。
外山健康局長より、今の制度は医療保険制度に上乗せした税による制度(公費負担医療制度)であり、疾病を限定せずに医療保険による保障ですべての疾患に裾野を拡げることで医療費助成と研究を切り分けるという選択肢もあるが、いきなり医療保険で全ての難病医療費負担をカバーできるものではなく、私は上乗せ(特定疾患治療研究事業)が現時点では必要と思っている。難病に着目した制度設計は現時点では必要。ではどのようなしくみにするのか。みなさんの議論を注視したいと発言。
その後の議論では、日本の医療、介護制度の問題にからめて、そもそも欧州では医療費はほとんど患者に負担がなく、日本のような上乗せ制度の必要がない。特定疾患のような上乗せ制度が行われていることは、日本の医療、介護の経済的制度の貧しさの反映でもあるとの発言もありました。
研究は疾患をできるだけ広く扱い科学的なデータを研究できるようにすること。医療費助成は研究事業から切り分けて行うこと。大筋では各委員の意見は、この点ではおおむね一致する発言がありました。
同時に、研究事業に特化した場合、医師、患者双方に負担が重い個人票データをとるためのメリットがないと、患者が調査に同意しなくなるとの指摘もあり、災害時のカルテ保管による情報登録などのメリットも必要との発言もありました。
伊藤委員からは、患者の医療費負担は重いこと、医療費助成制度を、難病対策だけに求めることは限界があり、医療保険制度、高額療養費の限度額の大幅引き下げによって上乗せ制度も財政的に安定するとして、医療保険部会での議論、障害者福祉や介護保険など他制度の制度改革との兼ね合いについても今後資料を出して議論してほしいと提起。また、病名の指定による問題については、研究が進めば制度からはずれるという今のやり方もおかしいとして、類似疾患や疾患群的なまとまりで患者を登録するやり方で幅広くしていくことはあっていいのではないかとの発言もありました。
金澤委員長は最後に、今回は自由討論だったが、共通するものも見られた。次回からの議論のベースになる討論だったと述べ、アンケート調査の内容などもふまえて、次回からの見直しの議論につなげたいとまとめました。
事務局より、次回は10月19日(水)10時から。その次は11月10日に行うこと。次回は、他の施策の動きも含めて事務局からの問題整理を出したいということで終了しました。
10年ぶりの疾病部会からの「指示」、外山健康局長のフル参加、金澤委員長の問題を整理した進行などから、難病対策の見直しにむけての、「本気」が感じられた委員会となりました。
平日午前中の委員会ということもあって、今回も傍聴席には当事者の数が少なく(10数名)、次回以降もっと関心をもって見守ることの必要を感じました。これからの新しい難病対策のために! (水谷)
2011年9月30日