難病法案が閣議決定されてから初めて伊藤代表理事が講演

2月16日(日)、難病対策に関する講演会が大阪市で開催され、難病法案の閣議決定後初めてJPAの伊藤たてお代表理事が講演を行い、大阪府や近隣の府県から参加した約90名が熱心に聴講しました。

主催は大阪府とNPO法人大阪難病連です。「大きく変わる難病対策の全体像」という演題で伊藤氏が難病法案についての説明や課題、そして地域で取り組んでいかなければならないこと等についてわかりやすく説明しました。そして、法律を作り活用するためには地域で解決しなければならない課題が多く存在するとして、具体的には、地域で難病法案の上乗せ支援を求めていくことや福祉の認定制度の問題等を挙げ、地域難病連の果たす役割の大きさについて述べました。

その後、休憩をはさんで参加者との意見交換を行いましたが、中にはかなり問題があるとしか言いようのない地域行政の対応が報告されました。
それは受診に関するものですが、一件は大阪市の西成区では市長が特区のモデルケースとして、生活保護者の受診は原則として1医療機関に限定するとしたことから、生活保護の場合かなり医療が制限され専門医にかかれない場合があるというものでした。
もう一件は、奈良県では特定疾患で医療を受けるためには1医療機関ごとに受給者証の発行が義務付けられているというものです。そのため、報告したベーチエット病の方は、内科や眼科など複数の医療機関を受診して専門医の治療を受ける必要がありますが、何枚も受給者証を申請すると行政から快い対応をしてくれないとして困っておられました。他県への転居も考えているというぐらいですから相当なものです。しかも、申請をしてから審査があり、受給者証が届くまで1か月ほどかかるというものでした。
伊藤氏も難病患者の人権にかかわる問題としてJPAでも厚労省にも報告すると述べると共に地域の患者運動で協力して取り組むべき課題としました。
その他、地域で暮らすパーキンソン病の方から、薬の影響と思われる副作用が出ると精神科に入院させられ、専門医による治療が受けられなくなったという事例が挙げられました。これに対し伊藤氏は、近年精神科への入院患者は減少傾向にあり、言葉は悪いが経営のため精神科の医療機関による患者狩りのようなことも行われていると報告。医療においては患者本人の意思が尊重されなければならないことを強調するとともに、地域の難病相談・支援センターに相談するなどして対応してほしいと述べました。

そして最後は、医師からかなり腹立たしい対応を受けたというパーキンソン病の方の報告を受けて、伊藤氏は「検査をしても無駄だという医師がいたり、ドクターショッピングをするなという批判があったりするが、患者から言えばドクターを選ぶのも寿命のうち。患者が医療機関と医師を選ぶことができる日本の医療保険制度はとても大事であり、それを保障する国民皆保険制度が危うくならないようにしなければならない。お仕着せの医療だけでは難病は克服できない。良い病院や医師の選び方は患者会などで情報交換してください。」と述べ終了しました。

今回の内容から見えてきたのは、たとえ難病法案が来年の1月から施行されたとしても、地域による格差や実情の違いが大きく存在する中で、実際には法律さえできればそうした問題がすべて解決できるわけではなさそうだということです。患者団体の地域での取り組みがいかに大事かということがよくわかった講演会でした。(藤原)

 

2014年2月17日