第19回総合福祉部会、厚生労働省案をめぐり意見続出! 障害者の範囲は「難病など」にも拡大 難病対策委でも議論

2月8日に開催された第19回総合福祉部会で、昨年8月にまとめられた「障害者総合福祉法(仮称)の骨格に関する総合福祉部会の提言」(以下、「骨格提言」)をふまえた法案作成を行っている政府から厚生労働省案の内容が説明されました。
 *厚生労働省案を含む第19回総合福祉部会の資料は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi/2012/02/0208-1.html

 マスコミ報道は各紙が「障害者福祉、難病患者にも対象拡大」(読売)、「難病患者にも障害者福祉」(朝日)、「新法案、難病患者を給付対象」(毎日)、「改正案、難病患者も対象」(日経)と大見出しで報道しました。
 今回、新法案の障害者の範囲に「難病など」が書き込まれたこと自体は従来の制度から見れば一歩前進であることは間違いありません。
 しかし、翌日に開催された第20回難病対策委員会で明らかにされたように、この厚生労働省案が実現したとしても、対象となった難病患者などが受けられる障害者福祉は、現在健康局予算で施行されている「難病患者等居宅生活支援事業(ホームヘルプサービス事業、短期入所事業、日常生活用具給付事業)」のみで、身体障害者福祉法に基づく身体障害者手帳制度を拡充するものではありません。現行の障害者自立支援法を廃止し、それに変わる障害者総合福祉法(仮称)のなかに、手帳のない難病などの人たちも対象に加えようというものです。
 したがって、身体障害者手帳が交付されることによって受けられる様々な制度(都道府県の重度心身障害者(児)医療費助成制度、JR等の交通運賃割引をはじめとする各種割引制度や所得税・住民税の障害者控除など)は対象にはなりません。
*9日に開かれた第20回難病対策委員会では、難病の人たちに必要な施策のうち、今回の障害者総合福祉法(仮称)案で対象になる施策の範囲についてのイメージ図が示されています。
  http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000022csg.html
  「資料2 今後の総合的な難病対策(イメージ図)」参照

 厚生労働省案は、これまでの障害者制度改革推進会議およびそのなかに設けられた総合福祉部会で1年半にわたり検討されてきた新法の骨格提言からするときわめて不十分な内容であるとして、総合福祉部会でも委員の多くが反発。厚生労働省側は、骨格提言は段階的、計画的に実施していくと述べたのに対して、それならば実現にむけてのプロセス、工程表を丁寧に示すべきとの意見も出されました。政府、厚生労働省は今後与党民主党内の障がい者WTと総合福祉部会三役との懇談をふまえて、法案提出の準備をすすめていく意向を示しました。

○難病対策委員会からの意見メモも提出 資料(PDF)

 総合福祉部会の翌日(9日)に開かれた第20回難病対策委員会では、中島障害保健福祉部企画課長が厚生労働省案について説明を行い、委員会として厚生労働省案への意見をまとめたメモ(添付)を提出しました。
 委員会では、これまでの難病対策の見直しの検討を行ってきており、他制度のうごきとして障害者制度改革のうごきについては報告されてきましたが、難病の定義付けなども含めた見直しの検討を昨年秋から議論してきているなかだけに、今回の厚生労働省案について、唐突に出されてきた感がある、もう少し前に相談してほしかったなどの意見も出されました。
 委員からの質問に答えて中島企画課長は、障害者新法で拡大される難病の範囲については、今後健康局および難病対策委員会での議論をふまえ、施行(2013年4月)までに政令で定めたいと述べました。また今回の制度改正では身体障害者手帳制度には手をつけず、範囲の拡大により難病などの人たちが受けられるようになる福祉サービスは、現在の難病患者等居宅生活支援事業の3事業に限られると述べました。委員からは、現行の居宅生活支援事業を受けている人たちが受けられなくなったり、また受けづらくなることのないようにとの声もあがりました。

 民主党はこの新法案をA法案(今国会で成立をめざす法案)と位置づけており、そのために、3月中旬の閣議決定、国会提出をめざしています。 

 JPAは、10日、総合福祉部会委員の野原正平氏(JPA前副代表)の意見として、障害者の範囲や障害程度区分、権利擁護などに関する意見を総合福祉部会に提出しました。

2012年2月11日