国会請願について

 

〇国会請願ってなに  

 国会請願は、民主主義のルールに則った厳かな活 動だといえます。国民が国政に対する要望を直接国会に述べることのできる方法には、請願と陳情があります。請願と陳情の違いは、紹介議員を必要とするかしないかです。請願は必要としますが陳情は必要としません。陳情の場合、議長が必要と認め受理したものは、受理番号が付され、適当の委員会に参考のため送付されますが、請願と違い文書表は作成されません。  
 請願は、憲法第16条(請願権)で国民の権利として保障されているもので、取り扱いも陳情より厳格になります。国籍・年齢の制限はありません。衆議院、参議院は、請願についてそれぞれ別個に受け付け、互いに干預しないと規定されています。  
 請願書は、議員の紹介により提出しなければなりません。提出に関する具体的な手続も、議員ないし議員秘書さんに行っていただきます。そのため、私たちは集めてきた署名と共に議員事務所を訪ねて、紹介議員になっていただけるようにお願いをします。紹介議員は一人でも請願は可能ですが、多くの 議員に私たちの要望を知っていただき協力を得るため、党派に関係なく、多数の議員にお願いをしています。このとき、なるべく署名を集めた地域(可能なら選挙区)の議員に署名簿を提出できるようにすることが望ましいと考えます。大臣や政務官など、入閣されている議員などは公平性の観点から紹介議員になっていただけることはありません。

〇国会請願のながれ  

 紹介議員を通じて院に提出された署名は、事務方 のチェックを受けて正確な署名数がカウントされま す。〃や同一筆跡による複数署名など、規定外の署 名が散見すると紹介議員にも迷惑をかけますので、署名をしていただくときに注意が必要です。やむを えない事情で代筆やゴム印等の記名になるときは、署名者の捺印を要します。  
 次に請願文書表が作成・印刷され、院から各議員に配付されます。請願文書表には、その内容が周知されるよう、請願者の住所・氏名、請願の要旨、紹介議員名、受理の年月日、署名者数などが記載されます。請願は請願文書表の配付と同時に、請願の趣旨に応じて適当の常任委員会または特別委員会に付託されます。JPAのように医療や介護、就労などに 関する請願は、厚生労働委員会に付託されます。会期中に付託された請願の審査は、おおよそ会期末に行われます。  
 委員会では、付託された請願について審査を行い、議院の会議に付するを要するもの、要しないも のとに区分され、議院の会議に付するを要するもの については、採択すべきものか不採択とすべきものかが決定されます。さらに採択すべき請願のうち、 内閣に送付することを適当と認めるものについては その旨を附記し、議院に報告されます。また、理事 会の協議により請願の審査を保留されることもあり、その結果、審査未了の扱いとなる請願もあります。採択は、慣例として全会派の一致をもって決定 されることが多いようです。  
 本会議においては、会議に付された請願につい て、これを採択すべきものか不採択とすべきものかについて採決されます。採択された請願でも、内閣 に送付すべき旨が附記されていないものは衆・参の院で処理されます。国会閉会後、請願を紹介した議員には、その審査結果が通知されます。  
 採択される請願は、全体の1割程度とかなり狭き門です。そのため、JPAの請願項目は、文言を慎 重に検討しています。

〇採択されたらどうなるの  

 採択された請願のうち、内閣において措置するこ とが適当とされたものは、議長から内閣総理大臣に送付されます。内閣からは、毎年2回、その処理 経過が議院に報告、印刷され各議員に配付されま す。請願が採択され内閣に送付されても、強制力はありません。請願項目への対応は、内閣の判断で す。それでも、多くの国民による署名と共に国権の 最高機関である国会で採択された請願項目は、内閣 にとっても軽視できるものではないはずです。

〇署名数は要望のバロメーター  

 署名数は、要望の大きさを示すバロメーターです。署名数で採択が決定されるわけではありませんが、議員や各省、内閣も署名数を必ず確認するため、より多くの署名数が要望を実現させるための後押しになります。
 私たちの第1回目の請願は、JPAの前身となる JPC(日本患者・家族協議会)が結成された1986 年でした。それからは毎年続けますが、初めて衆議 院で採択されたのは1989年です。1995年には衆・ 参の両院で採択(署名数40万筆)され、その後、数年間両院での採択が続きます。こうした請願は、法制化以前の難病対策の継続と医療費助成対象疾患の追加および対策の拡充などの成果を上げました。 また、JR の内部障害への運賃割引の拡大(1990 年)の後押しにもなりました。  
 署名数がもっとも多かったのは2010年の94万 筆で、難病法成立の原動力になりました。最近では、難病対策はもとより不十分ながらも小児特定疾患の移行期医療などに請願の成果が見えつつあります。ただし、採択されても、すべての項目が実現するとは限りません。  
 2010年以後、JPA請願の署名数は減少傾向にありますが2016年の通常国会、2017年の通常国会と続けて両院で採択されています。
 毎年、署名を集めるのはたいへんです。街頭に立っ たり、知人、友人、親戚、職場の人にお願いしないといけないのですから。
 それでも国会請願には、社会を変えていく上で大きな意味があることは確かです。

(2017年12月 編集担当 藤原 勝)

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