第15回難病対策委員会、厚労省が論点メモを提示

10月19日(水)、第15回難病対策委員会が開かれました。
今回は、辻泰弘副大臣(新たな難治性疾患対策の在り方検討チーム座長)が、冒頭から最後までフルに出席しました。
辻副大臣は冒頭のあいさつで、難病は政治が光をあてて前進させていかなければならない分野と思っていると述べ、難病対策は法的背景をもたないがゆえに予算編成時にシーリングの対象となってしまうとして、地方の超過負担問題も法的背景をもたないと解決しない、根本的には法制化が必要であると強調しました。
また、現在の障害認定では症状の固定にならず障害認定されない問題や就労支援の問題などを挙げ、これらは政治が光をあてて前進させていく課題であるとの認識で取り組んでいく決意であると結びました。

これまでの委員会における議論を踏まえた論点について
事務局(厚生労働省健康局疾病対策課)より、これまでの議論を整理した7項目の「論点メモ」が提示されました。

①対象疾患の公平性の観点
難治性疾患の4要素(希少性、原因不明、治療方法未確立、生活面への長期の支障)を満たしていても特定疾患事業の対象(現在56疾患)となっていない。希少性難治性疾患の間でも不公平感。また臨床調査分野130疾患、研究奨励分野214疾患の中には4要素を満たしていないものも含まれる。公平性の観点から一定の基準をもとに入れ替えも考える必要があるのではないか。

②特定疾患治療研究事業運用の公平性の観点
審査が不十分で本来対象外の者も対象となっている。他法優先にもかかわらず患者負担が少ない特定疾患事業が利用されている。

③他制度との均衡の観点
小児慢性事業、自立支援医療など他の公費負担医療制度と比較してどう考えるか。入院時食事療養費標準負担も補助の対象になっている。

④制度安定性の観点
年間2~3万人の受給者増、100億円の医療費増。地方と国2分の1となっているにもかかわらず大幅な超過負担が続いている。

⑤臨床調査個人票の患者データの質、効率性の観点
データの質、統計データとしての精度に問題。データ入力する都道府県の負担が大きい。データ入力するインセンティブが感じられない(患者、診断医、行政)。特定疾患は福祉的側面のみが強調され研究的意義への認識が薄くなっている。

⑥総合的施策の観点
医療費助成、研究に偏重。理解の普及や雇用・就労の促進など総合的な対策が進んでいない。難病相談・支援センターの基盤が脆弱、活動にも差がある。患者団体の力量、国際連携、最新情報の提供、災害時の特段の配慮など。

⑦その他
抜本的な見直しの必要。他制度との整合性。特定疾患の研究的側面と、福祉的側面との考え方の整理の必要。難病の定義についての整理の必要。
小児慢性からの20歳以降の医療費助成(キャリーオーバー)の問題。

検討では、伊藤委員から「公平性の観点のなかで入れ替えることを考える必要があるとの整理をしているが、これまで、拡充をしていくという意見はあったが、入れ替えという話は委員会では出ていないのではないか」と質問。事務局からは、そういう意見も少しあったということで記述したとの回答がありました。
また、伊藤委員は、公平性という場合、特定疾患という制度のなかだけの問題と、日本の医療全体のなかの公平性という問題を分けて考える必要があると述べ、特定疾患制度の枠内で、はずすはずさないの議論になることへの危惧を述べました。
また、委員の発言のなかで出されている「既得権」という言葉についても伊藤委員は、患者の側は既得権でうごくようなことはしていない。そういう言葉は使わないでほしいし、今後注意してほしいと発言しました。葛原委員より、既得権といったのは疾患の既得権であって患者のではない。誤解のないようにしてほしいとの発言がありました。
今回の議論のなかで、いわゆる難病といわれる病気の数について、厚労省では5000から7000としているが実際には500程度であるとする発言がありました。また、130疾患すべての推定患者数を合計すると680万人になるという資料も提示されました。
 
難治性疾患の定義について
定義について、事務局より①難病対策要綱(昭和47年10月)、②難病対策専門委員会最終報告(平成7年12月)、③特定疾患対策懇談会(平成9年3月)、④難病対策委員会(平成14年8月)それぞれの記述が提示され、これを元に意見交換がされた。
伊藤委員は、平成9年の定義と14年の定義には違いがあるのかどうかと質問。事務局より、大きくは変わっておらず連続しており、詳しく補足的に説明していると回答がありました。
また、基本的にはこれらの定義は今も生きているのかという質問には、山本課長が、昭和47年の要綱は生きている。そこから積み上げてきた結果として平成14年のものが現在の立ち位置であると答えました。山本課長は要綱は難病対策全体を包含した概念。平成7年以降は難病対策のうちの、特定疾患の課題の議論のなかでの定義。包括しているエリアが違うということだと述べました。
金澤委員長からは、難治性を医学的にどう定義するのか、海外を含めた研究者の考えをまとめて整理し、委員会に報告してもらいたいとの要望が事務局に出されました。
 
関連制度の審議状況について
保険課長より、現在医療保険部会で審議中の高額療養費制度の見直しについて、資料とともに現況が報告されました。

最後に、金澤委員長が、今後の検討に際して、委員以外の関係者からのヒアリングもやりたいと述べ、事務局で相談して次回以降に行うことが、確認されました。
次回は11月10日(木)午前10時より。

2011年10月20日