【報告】第5回「高額療養費制度の在り方を考える専門委員会」が開催されました

 2025年10月22日(水)10時より「高額療養費制度の在り方を考える専門委員会」が、厚生労働省専用第21会議室にて開催されました。

 JPAからは大黒宏司代表理事が委員として出席した他、患者団体からの委員として、全国がん患者団体連合会(全がん連)の天野慎介理事長も同じく委員として出席しました。

 当日の資料は厚生労働省のウェブサイトからご覧いただけます。

高額療養費制度について 

 今回は直近の医療保険部会での議論の報告の後、論点として以下の3点が示されました。
また、議論を行うにあたって、これまでも示されてきた高額療養費の支給件数や高額レセプトの推移などを直近のデータにアップデートしたデータに加え、胃がんや乳がん、アトピー性皮膚炎などそれぞれの疾患ごとに医療費負担のモデルケースについて説明が行われました。

論点

資料1の14ページより一部抜粋、要約

高齢化の進展や医療の高度化等により増大する医療費への対応

現行制度でも医療費負担が極めて厳しいとの意見があった一方、高齢化の進展や医療の高度化等により医療費が増大する中、制度を維持し、かつ、現役世代の保険料負担への配慮の必要性なども踏まえると、一定の見直しは必要との意見もあった。
また、制度を見直す際は、仮のモデルを設定した負担のイメージやデータを踏まえる必要があるといった意見もあった。これらを踏まえ、今後とも増大が見込まれる医療費への対応として、高額療養費の負担の在り方をどのように考えるか。

年齢にかかわらない負担能力に応じた負担
  • 年齢にかかわらない応能負担という全世代型社会保障の考え方に基づき、70歳以上の高齢者に設けられている外来特例への意見があった。
    この点を踏まえ、外来特例の在り方についてどのように考えるか。
  • また、応能負担を求める観点から、現状、大括りとなっている所得区分への意見があった。
    一方、現在も一定の所得を有する方は応分の保険料を負担している中、給付面の応能負担を強めることは制度への納得性を損なうとの意見もあった。
    この点を踏まえ、所得区分の在り方についてどのように考えるか。
セーフティネット機能としての高額療養費制度の在り方
  • 高額療養費制度はセーフティネット機能として患者にとってなくてはならない制度であり、今後もこの制度を堅持していく必要性については認識が一致している。
    その上で、制度を将来にわたり維持していく観点から、仮に自己負担限度額の見直しを行っていく場合であっても、特に、現行制度においても医療費負担が重くなっていると考えられる長期にわたって継続して治療を受けられる方や所得が低い方の負担が過重なものとならないよう配慮すべき、といった意見も多かった。
  • 医療費が増大する中で、仮に自己負担限度額の見直しを行っていく場合であっても、患者の経済的負担に配慮したセーフティネット機能の在り方として、どのように考えるか。

事務局からの説明に続いて、大黒委員は提出した資料も交えて以下の意見を述べました。

【大黒委員】
 論点の中で、医療の高度化などによる医療費の増大があげられており、希少疾患の薬剤開発に影響するのではないかとの心配の声が患者からもあがっている。
提出資料に示したように、希少疾患は約7,000疾患あると言われ、その95%には治療法が存在しないとも言われている中、ようやくここ数年、一部の疾患で新薬が生まれ始めた段階にある。
医薬品の高コスト化の一因には、希少疾患を対象とした新薬の増加も挙げられているが、患者数が少ないため、開発費を回収するには単価を高く設定せざるを得ず、それが価格高騰につながっている
ようやく開発が進み始めた中、自己負担が増えれば継続治療が困難となり、逆に単価を下げ過ぎると新薬開発の意欲や投資が損なわれるおそれもあると言われている。
これらの薬剤は、これまで救えなかった命を救うものであり、医療の進歩を象徴する成果でもある。
 また、ようやく開発された高額な新薬が唯一の選択肢となる希少疾患患者にとって、治療の可否が生命に関わることがある。
受益者負担と言われる医療費の自己負担は、公的保険制度の公平性を保つ仕組みとされているが、希少疾患を患った責任はその人にはなく、この場合、医療の受益は選べるものではなく、病気になった人が必要に迫られて利用するもので、過度な負担は、国民が等しく受けるべき社会的権利としての公的保険制度の公平性を損なうおそれがある。
 資料1の19ページにも高額レセプトの件数が増えているとの記載があるが、私たちは、費用対効果の視点は大事だと思うし、有効性に関して評価を見直すことを否定する立場にもない。
ただ、薬剤の高コスト化を一律に問題とする議論が広がると、新たな治療薬を待つ患者は希望を失いかねない。
高額療養費制度は、医療の進歩を受け止めるためのセーフティネットでもあると思う。
希少疾患の薬剤開発の光を消すことなく、未来の患者さんの命の選択肢を広げる方向も考えて、制度設計をお願いしたい。

また、天野委員も以下の意見を述べました。

【天野委員】
 資料の14ページ、「本日ご議論いただきたい事項」に沿って3点意見を述べたい。
 1点目【高齢化の進展や医療の高度化等により増大する医療費への対応】に関して、がんの患者団体でも、患者や家族、医療者から「まだ上げるつもりなのですか、本当に上げるのですか、上げられたらもう治療を受けられなくなる」という切実な声があることを、改めて強調しておきたい。
一方で、制度の持続可能性、現役世代の保険料負担への配慮の観点から考えた場合、引上げはやむを得ないとの意見も当然あるわけで、患者団体としても、高額療養費が大きなリスクに備えるものであり、公的保険の根幹的な制度という観点から、他の代替手段も十分考えてほしいことを申し上げてきた。
また、患者や家族からは新政権になったことで、高額療養費の議論はどうなるのかとの指摘もある。
例えば、今回新しく政権に入った日本維新の会も2025年の3月に高額療養費について、国民の命と健康を守るセーフティネットとして重要な役割を果たしており、国民皆保険制度の中核中の中核であることから、医療改革の文脈では最後に手をつけるべき制度だという声明を出されている。
そういった観点から、制度全体の中で議論してほしいということを改めて申し上げたい。
 2点目、【年齢にかかわらない負担能力に応じた負担】に関して、資料の5ページでも、医療保険部会にて、国民の理解を得る上で、現役世代の負担の軽減と能力に応じた全世代の支え合い、相互共助が重要である一方で、特に75歳以上の後期高齢者には、健康状態の悪化が深刻な問題となり、医療費の負担も大きくなるため配慮が必要だとのコメントが掲載されている。
高額療養費の要望活動を行った際、特に医療者から寄せられたコメントを紹介すると、例えば、最近は外来での抗がん剤治療が増えているが、あるレジメンがあったとして、高齢の方だと外来特例などの制度があるため、一定の負担の中で治療を受けることができる。
一方で、現役世代、特に子育て世代では、厳しい経済状態の中で高齢の方が受けている治療が受けられていない現状がある。
これは公平性の観点からどう考えればいいのか、葛藤を抱えながら日々治療しているとのコメントも届いている。
そういった観点から、能力に応じた全世代での支え合いを考えた場合、現在、現役世代が特にがんにおいて高齢の方が受けられているレジメンが現役世代は受けることができない場合があることはこの場で申し上げておきたい。
 最後3点目、【セーフティネット機能としての高額療養費制度の在り方】に関して、事務局から示されたモデルケースの中で、30ページの乳がん患者の医療費負担の例(40歳代女性、標準報酬15万円、年収約200万円未満)に着目した。
以前もお話したが、世界保健機関(WHO)は、手取り額から食費や住居費などの基本的生活費を差し引いた額の40%を医療費が超えた場合を「破滅的医療支出」と定義している。
それに基づくと、30ページの患者は、分母が右側の円グラフの「その他」に該当するかと思うが、「その他」を分母として見た場合、この患者の医療費の支払いは50%を超えている。
患者の過重な負担にならないということを考えた場合、既に現行制度でも破滅的医療支出を大きく超える患者が生じていることを、十分に配慮しながら制度の検討を行う必要がある。

続いて、大黒委員からも再度発言がありました。

【大黒委員】
 先ほど医療の高度化等については発言したので、「本日ご議論いただきたい事項」の中の2点目と3点目について発言したいと思う。
 まず、外来特例の在り方だが、一定の年齢になるとかかる疾病の数が増え、医療機関にかかる回数が多くなるというのはその通りなので、高齢者の特性を踏まえた仕組みは何らか必要で、現役世代と全く同じ制度ではなかなか難しい。
低所得者の方や長期にわたり継続して治療を受けている患者の中に高齢者も含まれる可能性があり、そういった方に配慮する方向性は一致しているので、今の制度のままでは無理かもしれないが、何らかの方策は必要ではないか。
 また、一定の所得を有する方は応分の保険料を負担している中において、給付面の応能負担をこれ以上強めることは制度への納得性を損なうということについても、そのように思う。
私自身も、難病になった時点では一般的な収入はあったが、病気になった途端に働けなくなった。
その際も、一定の所得を有する方に含まれるので、医療費の自己負担は大変だった。
よって、病気になった後にも所得を維持できている前提で負担を考えると、実態とは合わないのではないか。
ですから、病気後の負担は本当に応能負担になるのかというのは疑問に思うので、給付面の応能負担は何らかの配慮が必要ではないか。
 3点目のセーフティネットに関しては、15ページに2021年~2022年の高額療養費の支給金額が出ているが、その伸びは0.12兆円で、一方、17ページの国民医療費の同じ期間の伸びは1.7兆円になっている。
増額の高額療養費の費用寄与は7%ほどしかない。
一方、60ページの以前の見直し案において、高額療養費の自己負担額をかなり引き上げたとしても、加入者1人当たりの保険料の軽減額は年間1,100~5,000円となっていて、月額で90~400円程度になる。
元々、国民医療費が48兆円規模で高額療養費が3兆円規模ですから、高額療養費は6%程度にすぎず、高額療養費の見直しで国民医療費全体を抑制するのはかなり無理が生じる。
これは全体で見直していくという皆さんの意見と同じだが、高額療養費の伸びが無視できないのも分かるので、高額医療費の自己負担額の引上げの議論より、費用対効果の見直しなどで高額療養費の伸びがどのように抑制できるかを考えることが賢明ではないか。

 報告は以上です。

 第6回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会は、11月21日(金)13時30分より開催されます。
委員会はYouTubeにてライブ配信されますので、ぜひご注目ください。
詳細は、厚生労働省ウェブサイト内第6回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」の開催についてページをご参照ください。

参照ページ

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