2025年11月21日(金)13時30分より「高額療養費制度の在り方を考える専門委員会」が、厚生労働省省議室にて開催されました。
JPAからは大黒宏司代表理事が委員として出席した他、患者団体からの委員として、全国がん患者団体連合会(全がん連)の天野慎介理事長も同じく委員として出席しました。
当日の資料は厚生労働省のウェブサイトからご覧いただけます。
議事次第:高額療養費制度について
論点
資料1の14ページより一部抜粋、要約
- 高齢者の受診動向や実際の医療費負担のケース等のデータも踏まえつつ、外来特例の在り方について、さらにどのように考えるか。
- 高額療養費制度の短期利用者(数か月のみの方)と長期利用者(長期療養者の方)の場合で分けて考えるべきか。
- その他、さらに論議を深めていくべき点があるか。
事務局からの説明に続いて、大黒委員より2025年11月15 日に開かれた難病・慢性疾患全国フォーラム2025で発表した、「難病領域における高額療養費制度に関する調査報告(NPO 法人ASrid)」の概要が報告されました。
>>【委員提出資料2】大黒委員提出資料(PDFファイル)
患者当事者・家族視点からみた高額療養費に関するアンケートの結果報告(まとめ)
- 難病患者・家族の多くが高額療養費制度を利用したことがあった。(322名中、今まで1度でも利用したことのある人=240名 74.5%)
- 指定難病患者も、確定診断前や、重症度基準・軽症高額基準に満たない場合、助成終了後の再発・再燃時、指定難病との関連を判定されない症状などの場合に高額療養費制度を利用していた。
- 自己負担額上限引き上げが起きた場合、治療への影響、生活や就労への影響、心理的な影響、家族や子どもへの影響など、広範な影響が語られた。
- 医療費の総額は、大多数の患者・家族が金額を把握していた。
これまでの委員会のヒアリングにおいても、高額療養費の支払いが現物給付化されていることで費用総額が見えにくくなっているため、制度を意識する機会が少ない、また、コスト意識という面での課題を指摘する意見がありました。
しかしながら、今回の調査報告では少なくとも難病患者の場合は、77%の方が窓口負担だけではなく、医療費の総額も把握をして医療を受けているという回答で、例えば高額療養費を支払う人は、それ以外に治療法としての選択肢がない場合が多いので、むしろ医療費に対しては敏感なのではないかとの意見がありました。
大黒委員からの報告後、天野委員もこの結果に対して、「もちろん個々の患者さん全てがどういった自覚をお持ちなのかというのを調べるのは不可能ではあるのですが、例えば患者さんが医療費を使っていることに無自覚かどうかというと、少なくともこの難病患者さんの例では7割以上の患者さんがもちろん窓口負担額だけではなく、総額も把握しているということがうかがえるかと思いますので、こういった特に社会保障であるとか医療費について議論する際は、印象論ではなくできるだけファクトに基づいて議論いただくことを望んでおきたい」と述べました。
また、天野委員からも五十嵐中氏(東京⼤学⼤学院特任准教授)の協力を得て提出した資料について、説明がありました。
>>【委員提出資料1】天野委員提出資料(PDFファイル)
資料は、レセプトデータを用いた自己負担額と破滅的医療支出※の関係ということで、日本システム技術株式会社のレセプトデータを用いて高額療養費利用者を抽出し、医療費及び自己負担額、所得区分のデータから破滅的医療費支出の有無が所得区分別・疾患別に推計されたものとなります。
※破滅的医療支出
家計の自由になるお金(住居費や食費など、生活に必要な費用を除く)のうち、医療費の支払いが40%を超える状態。WHO(世界保健機関)が定義付けしている。
疾患別「破滅的医療支出」の該当割合
- 固形がん
区分オ(もっとも所得の低い層、低所得者):41.76%
区分エ(2番目に所得の低い層、標報26万円以下):17.45% - 血液がん
区分オ(もっとも所得の低い層、低所得者):44.44%
区分エ(2番目に所得の低い層、標報26万円以下):31.39% - 循環器疾患
区分オ(もっとも所得の低い層、低所得者):58.54%
区分エ(2番目に所得の低い層、標報26万円以下):11.85% - 糖尿病・腎疾患
区分オ(もっとも所得の低い層、低所得者):53.45%
区分エ(2番目に所得の低い層、標報26万円以下):18.32% - 筋・結合組織疾患
区分オ(もっとも所得の低い層、低所得者):63.75%
区分エ(2番目に所得の低い層、標報26万円以下):20.42%
組合健保のデータのため、若干高所得あるいは健康な人に偏る可能性があること、「現物給付」のデータのみを使っているため、「現金給付」は含まれておらず、偏りがある可能性に留意が必要。
天野委員は、限界があるデータにはなるが、特に低所得者を中心に、既に破滅的医療費支出に該当している方が一定程度いることが想像できると述べました。
大黒委員は論点についても、以下の意見を述べました。
【大黒委員】
まず、外来特例の在り方について、高齢者の特性を踏まえた仕組みが必要ではないかと思うので、見直す場合も部分的な調整に留めるべきと考える。
外来医療は、薬物の治療の継続等、重症化の予防に欠かせないもので、過剰受診を減らす効果は分からないが、むしろ受診抑制リスクが大きい可能性もある。
また、高額療養費全体の中でも外来特例の財政規模は限定的と思われ、負担増の割に財政効果は小さい場合もあり得るため、見直しにあたってはデータを示し、どの程度効果があるか知らせていただければありがたい。
ただし、外来特例では受けられる医療が、現役世代では厳しい経済環境のため受けることができない医療格差も指摘されている。
増加する現役世代の保険料を軽減していくことも大切だが、現役世代の医療の負担の在り方も考えていただければと思う。
また、高額療養費制度の短期利用者と長期利用者で生活への影響が大きく異なると感じている。
短期利用者では一時的な家計の問題を緩和することで済むが、長期利用者の場合は負担の累積が大変で、生活や就労に直結する深刻な問題となっている。
就労面では、収入の減少や非正規雇用への転換というケースも少なくない。
長期利用者にとっては、高額療養費制度は生活を支える基盤そのものであるため、制度全体の整合性を考えながら、分けて考える必要性は高いのではないかと思う。
現在の多数回該当のみの制度では、長期利用者の生活への影響を緩和することが難しいため、年度額上限を加えることなども考慮しながら制度を考える必要があると思う。
最後に、先ほど天野委員から破滅的医療支出のデータが示されたが、現状でもかなり厳しい医療費負担であることをデータで見られたことは大変ありがたく思う。
特に低所得者の負担が大きいことも分かりやすく示していただいたので、今後の検討はこのようなデータも参考にしながらお願いしたい。
また、天野委員も以下の意見を述べました。
【天野委員】
まず、論点のうちの1つ目の高齢者の外来特例について意見を述べたい。
前回も申し上げた通り、がん患者に関しては、例えば外来の抗がん剤治療において、高齢者は外来特例により一定の低い負担の中で治療を受けることができる一方、現役世代、特に子育て世帯は、厳しい経済環境の中で同じ治療を受けることを躊躇してしまう、あるいはできない現状があり、特に医療者より公平性の観点から問題があるのではないかという多くの指摘をいただいていることを改めて申し上げたい。
また、世代間格差ではなく世代内格差の観点で見た場合も、医療費の支払いに関しては、いわゆる高齢者の方が現役世代よりも格差が少ないのではないかという複数の指摘をいただいている。
もちろん、より精査が必要な部分かと思うが、より現役世代のほうが現行制度でも負担を強いられている可能性があることは言えるのではないかと感じている。
一方で、資料1のP29に外来特例の利用時の医療費負担の例として、70歳代会社員、男性、年収約230万の間質性肺炎の患者さんの実例が示されているが、この患者さんに関しては破滅的医療支出の水準とされる4割を大きく超えており、外来特例の患者さんにも5割を超えている方がいることがわかる。
そうなると、高額療養費だけではなく、例えば他の自己負担割合の変更による自己負担の変化によっては、容易に破滅的医療支出に陥る患者さんが増える可能性があるので、外来特例に何らかの変更を加えるのであれば、他の医療費制度の変更とも組み合わせて慎重に検討を進めないと、過重な負担増となる可能性があり、十分な留意が必要と考える。
論点の2つ目、長期にわたり継続して制度を利用される場合と短期間の方との切り分けについても、以前から申し上げている通り、長期にわたり継続して治療を受ける患者さんの負担はやはり大きく、多数回該当を含め、配慮は必須。
またその疾患の標準治療によって異なるが、多数回該当にあたらず、高額な医療費を毎月支払っている疾患のある患者さんがかなりいると聞いているので、やはり年額上限を設けていただくことが必須ではないかと考えている。
他の委員からは、高齢者の外来特例については廃止も含めて根本的に見直すべきという意見が、自己負担上限の見直しについては短期の治療を受けている人で見直し、長期にわたって治療を受ける人には配慮すべきではないかという意見が多数出されました。
報告は以上です。
参照ページ
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