【報告】第3回「高額療養費制度の在り方を考える専門委員会」が8月28日に開催されました

 2025年8月28日(木)15時より「高額療養費制度の在り方を考える専門委員会」が、厚生労働省専用第21会議室にて開催されました。

 JPAからは、大黒宏司代表理事が委員として出席した他、患者団体からの委員として、全国がん患者団体連合会(全がん連)の天野慎介理事長も同じく委員として出席しました。

当日資料は厚生労働省のウェブサイトからご覧いただけます。

議事次第:保険者及び医療関係者・学識経験者からのヒアリング

 今回は、保険者(日本航空健康保険組合、計機健康保険組合)と学識経験者、医療関係者が参考人として招かれ、制度見直しについてそれぞれの見解を述べた後、委員から質疑等が行われました。

 日本航空健康保険組合理事長の岡敏樹参考人は、まず健康保険組合の8割が赤字であり、その主な原因は高齢者拠出金の増加であることに触れ、高齢化・医療費高騰にどう対応するか、あらためて根本的議論が必要であると話しました。
 また、高額療養費制度は、現役世代にとっても重要なセーフティネットだが、現役世代の保険料負担が限界にある中で、医療保険制度を維持していくためには、給付と負担の全体の見直しを行うことは避けられないとし、どのように見直すことが長期療養している方々の負担への影響を最小限に抑え、かつ国民全体の納得感も得られるか、委員会での議論への期待を述べました。

 計機健康保険組合常務理事の日原順二参考人も、高額療養費制度は最重要のセーフティネットであり、長期にわたって継続して治療している方々の負担が過重なものとならないようにすべきとの見解を示しつつも、医療の高度化、高額薬剤の保険適用は医療保険財政を圧迫しており、高齢者の支援金の増大、子ども・子育て支援金の拠出等、被用者、とりわけ現役世代の保険料負担は限界にきていると話しました。
 そのような状況の中、医療保険制度を維持していくためには、「給付を受ける側」と「負担する側」のバランスをどう取るかに重点を置いて、丁寧に検討してほしいと要望しました。

 東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学の康永 秀生教授は、これまでの主たる医療費適正化政策として、公的医療制度の自己負担の導入や自己負担率の引き上げ、診療報酬点数制度・薬価制度を介した医療サービスの価格抑制をあげ、公的医療サービスの給付範囲の見直し(OTC類似薬の保険適用除外など)が現在検討の途上にあると話しました。
 また、自己負担割合の増加による健康への影響は限定的としつつも、高額療養費の限度額引き上げは、軽症~重症まで全体に影響していた負担の引き上げではなく、一定以上の医療ニーズがある(軽症ではない)患者層に限定した引き上げとなるため、これまでとは様相が異なるとの見方を示しました。
 続けて、私見として、特定の患者層における受診抑制・治療中断等による健康状態への悪影響を否定できないため、高額療養費の一律の引き上げは正当化されにくいことや、制度の趣旨は本来、重い病気にかかっても家計を破綻させないことであると述べ、今後の医療費適正化政策の立案に当たっては、「一律の負担増」ではなく、医療サービスの費用効果分析をもとにした利用抑制や価格を下げること、低価値医療をやめることを検討する必要があると話しました。
 
 国立がん研究センター中央病院の後藤 悌 呼吸器内科長は、高額療養費制度のおかげでどんな高額な治療をしても治療費が同じということはよいことだが、医療費の算定が歴月単位であることにより入院時期によって医療費が異なることや、医師もコスト意識を欠いた対応となるなど、多くの問題をはらんでいると述べました。
 また、医療費抑制のために薬価を下げ、それにより日本のマーケットの魅力が低下し、結果として日本で薬を開発しない・届かない(ドラッグラグ・ロス)問題が起きていることにも触れ、新しい薬を薬価を下げて広く届ける発想は、世界的な開発の潮流の中では持続困難になりつつあると指摘。
 現行制度は有効な治療をほぼ提供できるが、持続可能性の観点から問題があり、高額療養費制度をいかに維持しつつ、新薬を含めたより良い治療を患者に提供していくかが今後の大きな課題だと述べました。

 参考人の陳述に対し、大黒委員は以下の意見を述べました。

【大黒委員】
 皆さんのお話を伺って、高額療養費制度が全世代にとって重要なセーフティネットであること、そして負担と給付の観点から、医療保険制度全体の見直しが必要ということは認識が一致する点だと思う。その中で、現役世代の負担が大きいとの話が出たが、多くの難病患者も高額な保険料を負担しており、それに加えて医療費ものしかかっている。このような状況も考慮して負担と給付のバランスを考えてほしい。
 また、どのように見直すかという点で、長期療養者の負担への影響を最小限に抑えるということ、国民全体の納得感が得られることとの意見があったが、どちらも大切だと思う。ただ、患者も国民であり、国民の一人として私たち患者の納得感も必要ではないかと思うので、その辺りの議論もお願いしたい。
 そして、高額な医薬品が唯一の選択肢になる患者もいて、その治療の可否が生死に関わるという状況もある。その方々にとって医療の受益というのは選べるものではなく、病気になった人が必要に迫られて利用する状況でもあるので、過度な負担は、国民が等しく受けるべき社会的権利としての公的保険制度の公平性を損なう可能性があると思う。全てを患者の自己負担で解決するのではなく、高額療養費も含めた医療保険制度全体でバランスを見て考えることが大切だと感じたので、意見として述べさせていただきたい。

 また、天野委員は、4名の参考人に対し以下の質問を投げかけました。

【天野委員】
 3点質問させていただきたい。
 1点目、組合のお二方とも強調された点が、例えば8割の健保が赤字であり、主な原因は高齢者拠出金の増加や高齢者の支援金の増大が限界に来ているとの指摘でした。高額療養費制度は70歳を境に制度が違っているが、今後議論する際に70歳以上の制度について何らかの対応が必要などお考えがあれば伺いたい。
 2点目、康永参考人は、特定の患者層において健康状態の悪影響を否定できないため、一律の引上げは正当化されにくいことを私見として述べられ、特に低所得者層の家計への負担が無視できないとのお話だったが、今後、仮に高額療養費制度を見直す場合、低所得者層にはどのような対応が考えられるか、もしお考えあれば伺いたい。
 最後、後藤参考人からは、例えば、暦の月単位で算定されていることにより様々な問題が生じていることや医療者のコスト意識の欠いた対応があり得るのではないかとの指摘がありました。高額療養費制度で今後検討が必要となる場合、現在、暦の月単位で算定しているものを、海外等のように年額上限を設けるような制度に変えることや、具体的にこの点を変えるべきではないかというお考えがあれば伺いたい。

【岡参考人、日原参考人】
 特にこの点を見直すべきという意見はないが、給付と負担、全体のバランスを考えて総合的な判断をお願いしたい。

【康永参考人】
 具体的にここまで下げればよいという数字は持ち合わせていない。国全体での俯瞰的な視点と、実際に現場で起こっていることを虫の目で見ることの両方が重要で、実際に困っている方々に対して、どうアプローチするかという視点も踏まえたうえでの低所得者対策ということになる。
 現状、既に低所得者に対する対処はある程度されているかと思うが、それでも自己負担引上げになった場合に家計の破綻は起こり得るレベルになるかもしれないので、そこを回避する制度設計が必要ではないかと思う。

【後藤参考人】
 1つ目の暦の話は、デジタル化によってかなり改善するところがあり、月が不平等であれば年にするというのももちろん一つの方法ですし、大きな問題はなく変えることができる点ではないかと思う。
 一方で、医師や患者が費用対効果を考えて薬を使うかどうかは、既に別の会議でも議論されているが、薬の費用対効果というより大きな問題だと思う。
 さらに今日の議論にはなかったが、例えば年齢・収入によって高額療養費制度の費用負担が変わるという応能負担については、より大きな制度設計にもなってくるため、難しい問題ではないかと考える。

 その他、他の委員からは、高額療養費制度だけに留まらず社会保障制度全体での議論が必要といった声が多く出されました。

報告は以上です。

 2025年6月に閣議決定された骨太の方針においても、秋までに結論を出すこととなっている高額療養費制度の見直しですが、お伝えした通りまだ委員会の議論においても具体案や方向性は見えてきていません。
 今回の参考人の陳述やそれに対する各委員からの発言を踏まえ、この問題を高額療養費制度だけでなく他の医療保険制度も含めて全体を見ながら考えていくべきものであるとすれば、この秋まで結論を得ることが困難なことは明らかです。
 難病やがんなど病気を抱える人だけでなく、国民にとっても重要なセーフティネットであるからこそ、じっくりと腰を据えての議論を望みますし、昨年のように拙速に結論が出されることがないよう今後も注視していきたいと思います。

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