難病・小慢の合同委員会が、2024年12月26日(木)16時よりAP虎ノ門Bルームにて開催されました。
JPAからは委員の吉川祐一代表理事が都合により欠席となったため、参考人として辻邦夫常務理事が出席しました。
今回も、辻参考人の発言を中心に報告します。
当日の配布資料および議事録
下記のURLからダウンロードいただけます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47971.html
議事次第
- 既存の指定難病に対する医学的知見の反映について
- 難病・小児慢性特定疾病医療費助成制度に関するPMH(Public Medical Hub)による資格確認のオンライン化について
- 障害基礎年金等の支給額に合わせた対応について(報告)
議事次第「1.既存の指定難病に対する医学的知見の反映について」では、前回の委員会にて承認が持ち越しとなっていた、アップデートされた診断基準や重症度分類の既存の医療費助成対象者への適用について、資料1を用いて再提案が行われました。
前回、診断基準や重症度分類のアップデートにより、一部の疾患で、既に指定難病に認定されている患者(以下、既認定者)のうち、新たな基準に該当しない患者がいるとの報告がなされ、それに該当する場合は、知見の安定性やその影響を注視するため、当面の間は、アップデート前の診断基準等により更新申請を行うこととする提案がなされました。この提案に対し、患者団体や医療側、行政側の委員から、既認定者の申請時の資料等を調べ、アップデートされた新診断基準をもって診断し直すことは無理があり、誤りではないか、との意見が出されたため、再検討となり、今回の委員会にて再提案がされた形になります。
再提案では、基本的な考え方として、過去の判断については新たな基準は適用せず、現況の判断につては新たな基準を適用する考えが示されました。具体的に、診断基準については、新たに指定難病に認定される患者(以下、新規認定者)や過去の診断情報が不明な患者には新基準を適用することとし、既認定者には、新基準を用いての診断のし直し等は行わず、引き続き当該指定難病の患者として扱うことが示されました。また、重症度分類については、新規認定者、既認定者いずれにおいても、アップデート後の新しい重症度分類を適用することが示されました。(いずれもページ3下段図参照)
議事次第「1.既存の指定難病に対する医学的知見の反映について」についての辻参考人の意見は以下の通りです。
辻参考人
全体的に大変わかりやすく整理いただき感謝しております。2点、質問と意見です。
1点目、ページ2の「2.具体的な運用の2ポツ目の後段、過去の診断情報が不明な場合」というのは、どのような場合が当てはまるのか教えてほしい。
2点目、登録者証の所持者が重症化や軽症高額に該当した場合に、登録者証には疾患名が記載されないため、旧診断基準で診断済みという状況がわかりにくくなっているので、同様に対応してもらえるよう配慮をお願いしたい。
事務局(難病対策課)回答
1点目については、一度認定を受けた方で海外に在住された方や状態に変化があり、認定が途切れた方を想定している。
基本的には改めての受診、診察・診断を行うということで、新規の方に書いているが、他方、過去の診療情報等により、指定医の方で以前認定を受けていたことが確認できる場合には、その旨を新しい臨床調査個人票に記載し、認定の判断に使用してもらうことは考えられると思う。
2点目、どのようなもので確認するかについては、引き続き検討したいと思う。
他の委員からは、同一疾患で小慢から指定難病へ移行する場合、手続き上は新規認定になるが、小慢のときに認められたものについては、引き続き既認定の扱いとすることを都道府県へも通知してほしいといった意見が出され、今回の提案は承認されました。
議事次第「2.難病・小児慢性特定疾病医療費助成制度に関するPMH(Public Medical Hub)による資格確認のオンライン化について」については、前回の委員会でも議論された議題となりますが、政府にて調整・検討中となっていた、PMHの管理・運用主体や費用負担について、説明が行われました。
資料2のページ3に記載の通り、支払基金・国保連において、システムの管理・運用等の業務を全国規模で実施し、その費用負担は自治体(都道府県、市区町村)等にお願いする案が示されました。
他の委員からは、医療機関にシステムを導入する際の費用負担や自治体のこども医療費とのシステム上での棲み分けなどについての質疑が出され、今回の提案は承認されました。
最後に、議事次第「3.障害基礎年金等の支給額に合わせた対応について」について、資料3を用いて説明が行われました。
ページ2に記載の通り、難病・小慢の医療費助成制度においては、世帯の所得に応じて医療費の自己負担限度額が設定されており、そのうち低所得I・Ⅱについては、年収80万円を区分として設定されている。この基準は障害基礎年金2級等の支給額を参考に設定されていて、これまで795,000円/年だったものが、物価高騰により、約809,000円/年となったことを踏まえ、これにより低所得Ⅰに該当する方の自己負担額が変わらないよう、年収80万円を改正し、約809,000円以下を新たな基準として用いることが報告され、委員会は終了しました。
報告は以上です。
今回の委員会では、前回の委員会で懸案となっていた、アップデートされた新しい診断基準を既に旧基準にて指定難病と診断されている患者に当てはめ、診断し直す可能性があることについて、患者団体をはじめ医療側・行政側の委員からの意見が反映された内容に改められました。
直近の委員会の傍聴を通じて、やはり一部の関係者だけでの議論ではなく、様々な立場の関係者・一般市民が偏りなく委員会へ参画し、多様な視点からしっかりと議論しながら物事を決めていく必要があることを切に感じた次第です。
以上